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不動前の狭小住宅 ①クライアントが設計

10年来のお付き合いある工務店さんから住宅設計の依頼を頂きました。

新築戸建住宅設計は実に8年ぶりです。

それまではホテル・旅館・用途変更に追われていました。

今や宿泊施設は鳴りを潜め、ワクチン接種が進み早く観光の回復を願うばかりです。

 

工務店さん経由で設計条件をいただきました。

ご希望のお部屋と最低限の延べ面積が示されていました。

 

敷地条件から最大のボリュームを出し、そこに設計条件に示された部屋を入れていきます。

最初は単線で簡易な間取り図です。

設計条件が明確でボリュームも限られ選択肢もなく悩まずに間取り図はできました。

 

ノートパソコンを持って工務店さんとクライアントと最初の打ち合わせに臨みます。

工務店さんから、「プランを作ってきているようなので、それを見てから打ち合わせしましょう。」と、

単線で描いた間取り図をモニターに写して、たたき台のお披露目です。

 

北側斜線と道路斜線内の範囲を示して、この中で計画しなければならないこと、一般的な住宅ではご希望の床面積は得られないことをご説明。

工務店さんから、以前一度ご相談にいらして、予算が厳しくそれから話が進展することはなかったと。

他社からも設計提案があったようで、それは1階を半地下にして建物全体を下げる案です。

地階には水害の懸念と建設コストの増加が懸念されます。

 

 

私は建物全体を低くして斜線制限内に収まるよう床高・階高・屋根勾配を調整してクリアしました。

普通ではやらない設計です。

それもご説明してご理解いただきました。

 

間取り図をご覧になると、新たなご要望が生まれます。

それをメモもしないで、間取り図を変更していきます。

「それはこういうことでしょうか?」と修正された間取り図を3Dにして空間の様子をお見せします。

限られたスペースなので、どこかをいじると別のどこかに影響が及びます。

また余分に空いてしまう部分もできました。

 

玄関横に空いたスペースができると、シューズクローゼットが欲しかった。

設計条件ではトイレが1箇所だったので、2階にも追加しておいたら、リビングからトイレのドアが見えないようにその手間に壁とドアがついた。

キッチン横に収納も増えた。

個室のある3階にも洗面が欲しいと、また新らしいご要望。

 

普通は提案をお見せして、意見をいただき、それを持ち帰り修正案を作る。

その繰り返しで時間がかかる。

それおを待っている間クライアントはどんな気持ちだろうか?

期待と不安の中、時間は過ぎていく。

設計者も同じで設計条件が出尽くすまでプランの修正は続く。

 

私はその時間が惜しい。

新たな設計条件があらわれたなら、その場で設計案を考えクライアントに確認してもらいたい。

自分でもその場で設計しながら、「これはだめですね」とかいいながら、

クライアントからも「あれをこっちに移動したらどうなりますか?」とか、

工務店さんからも「そこは最低これだけの寸法がいります。」「ユニットバスの1416は流通が少ないので1616より高いですよ。」などなど。

90分の間に一通りのご要望は出た感じ。

クライアントが持ち帰りお子らの意見を聞くこと、

ここで概ね決まったレイアウトを図面(ファストプラン)にして、概算見積図をすること。

翌日には平面図・立面図・断面図が工務店さんに提出された。

 

工務店さんは今までにない設計スタイルに「すごいですね」と連呼。

「どうしてそんなことが一人でできるのですか?」と、

「スタッフがいなかったので、設計もオペレータも自分でやるしかなかったから。」とお応えしました。

これまでも設計案を提示して、打合せの中でBIMで多少修正することはありました。

私も戸建住宅の「設計ライブ」は初めてです。

 

何よりもクライアントと施工者と設計者が共通の目標を達成するために、集まり自分たちのそれぞれの立場を活かして意思決定を早めることができました。

これはBIMの世界ではIPD(Integrated Project. Delivery)と呼ばれ、プロジェクトを前倒しすることでコストコントロールの可能性が広がり、目標にいち早く到達できるというものです。

戸建住宅ですが、これを実施できたことは貴重な体験となりました。